熊本のヒノマルは、従業員60名で売上1兆2,849億円

  2026年09月16日 00:00

企業リストは「非上場・本社が東京以外」で絞ってあります。そこで売上高1兆円以上の会社を数えたら、31社ありました。

上から並べると、日本生命保険相互会社11兆35億円、トヨタファイナンシャルサービス4兆3,862億円、豊田自動織機4兆850億円、東芝3兆7,091億円、住友生命保険相互会社3兆5,177億円、サントリーホールディングス2兆9,701億円と続きます。

1兆円を超えているのに上場していない会社が、東京の外に31社もある。 そう読みかけて、内訳を確かめました。

31社の大半は、上場しない会社ではなかった

一社ずつ性格を見ていくと、こうなりました。

31社の内訳(私の分類)

  • 相互会社 ― 日本生命保険、住友生命保険。株式会社ではないので上場という概念がない
  • 協同組合連合会 ― ホクレン農業協同組合連合会。これも株式会社ではない
  • 上場企業の子会社 ― トヨタファイナンシャルサービス、ダイハツ工業、ソニーセミコンダクタ各社、イオンリテール、パナソニック各社、トヨタ自動車九州・東日本、住友電装、ヤマダデンキなど
  • 特殊会社 ― 西日本高速道路、中日本高速道路
  • すでに存在しない会社 ― 安宅産業(1977年に伊藤忠へ吸収)、(旧)アイシン・エィ・ダブリュ、(三代目)パナソニック、野村グループ

「上場していない」という欄が同じでも、理由がまったく違います。

前に書いたように、企業リストの上位が子会社で埋まることは分かっていました。今回はそこに、相互会社・協同組合・特殊会社・消滅した会社が加わります。31という数字は、性格の違うものを1つの列に並べた結果でした。

そして数えている途中で、明らかにおかしい行に当たりました。

ヒノマル、従業員60名

ヒノマル株式会社。熊本県熊本市中央区九品寺、1947年2月6日設立。企業リストには1兆2,849億円と入っています。

事業内容はこうでした。

肥料、植薬、園芸資材、産業資材の仕入・販売、園芸施設工事の請負・施工

従業員は約60名です。

1兆2,849億円を60名で割ると、1人当たり214億円になります。このブログでこれまで見た最高は、今治の船主である正栄汽船の約5億5,900万円でした。その38倍です。

成り立ちません。

数字の出どころを見ると、Wikipedia の企業情報欄に「1,284,900百万円」と書かれていました。百万円単位なので、1,284,900 × 100万円 = 1兆2,849億円。企業リストはこれをそのまま取り込んでいます。

熊本の肥料・園芸資材の卸が、従業員60名で日本有数の売上規模になる。どこかで桁が2つ動いていると考えるのが自然です。 ただし正しい額は確認できていません。 私に言えるのは、この数字が成り立たないというところまでです。

これまで記録してきたリストの壊れ方に、「桁が違う」が加わりました。

独立した事業会社数字が成り立たない
010,00020,00030,000サントリーホールディングス/大阪市北区/売上高 34324.8億円(2025年12月期・連結(酒税込))サントリーホールディングス34,325竹中工務店/大阪市中央区/売上高 16148億円(2025年12月期・連結)竹中工務店16,148ヒノマル/熊本市中央区/売上高 12849億円(2025年3月期(数字に疑い))ヒノマル12,849ヤンマーホールディングス/大阪市北区/売上高 10222.8億円(2023年3月期・連結)ヤンマーホールディングス10,223億円
今回一社ずつ確かめた4社の売上高(億円)。ヒノマルの数字は本文に書いたとおり成り立ちません。決算期は社ごとに異なります。

上場しない理由が書いてあったのは、1社だけ

残った会社のうち、独立した事業会社として1兆円を超えているものを確かめました。

サントリーホールディングス(大阪市北区堂島浜)は連結3兆4,324億8,300万円(酒税込、2025年12月期)、連結従業員41,628人。創業は1899年2月1日で、持株会社になったのが2009年です。

株主構成が特徴的でした。寿不動産が89.50%を保有し、サントリー持株会5.07%、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・三井住友信託銀行・日本生命がそれぞれ1.00%、創業家個人が合計0.18%。

そして、上場しない理由が記事に明記されていました。

サントリーが株式を公開しない理由(記事の記載)

  • 酒の醸造には時間が掛かり、短期的な利益を要求される株式公開に馴染まない
  • 株主に商品の味を左右されたくない
  • メセナ事業のリストラを要求されるため

今回調べた中で、理由が書かれていたのはこの1社だけでした。

竹中工務店(大阪市中央区本町)は連結1兆6,147億9,900万円(2025年12月期)、連結14,006人。創業は1610年(慶長15年)です。株主はTAKプロパティ44.74%、アサヒプロパティズ23.95%、竹中工務店持株会12.66%、竹中育英会4.49%、三菱UFJ銀行3.27%と続きます。上場していない理由の記載はありません。

ヤンマーホールディングス(大阪市北区茶屋町)は連結1兆222億8,300万円(2023年3月期)、連結20,958人。1912年に山岡発動機工作所として創業し、2013年4月1日に持株会社制へ移行しています。こちらも理由の記載はありません。

独立した事業会社数字が成り立たない
16001700180019002000竹中工務店/1610年/建築・土木竹中工務店サントリーホールディングス/1899年/酒類・飲料サントリーホールディングスヤンマーホールディングス/1912年/エンジン・農機・建機ヤンマーホールディングスヒノマル/1947年/肥料・園芸資材の卸ヒノマル
創業年。1610年の竹中工務店から1947年のヒノマルまで、337年の幅があります。サントリーは1899年創業、ヤンマーは1912年創業(山岡発動機工作所として)。

竹中工務店の数字も、25年前だった

もう一つ、確かめて分かったことがあります。

企業リストの竹中工務店の行は「1兆3,754億円・2000年」でした。しかし記事の数字は1兆6,147億9,900万円(2025年12月期)です。

25年前の数字が入っていました。 金額も2,394億円違います。とりせんや伊豆箱根鉄道のときは「年次だけが古くて金額は最新」でしたが、こちらは年次も金額も古い。

サントリーも同様で、リストは2兆9,701億円(2022年)ですが、記事では3兆4,324億8,300万円(2025年12月期)です。

1兆円規模の会社でも、リストの数字は当てになりません。

31という数字は、何も意味していなかった

調べ終えて残ったのは、こういうことでした。

「売上1兆円以上・非上場・本社が東京以外の会社が31社」という数え方には、意味がありませんでした。

  • 相互会社と協同組合は、そもそも上場できる形ではない
  • 子会社は、親が上場していれば市場の目は入っている
  • 特殊会社は国の政策の産物
  • 消滅した会社は、いま存在しない
  • そして1社は、数字そのものが成り立たない

同じ列に並んでいるだけで、比べられるものではありませんでした。

このブログは企業リストを起点にしています。売上高で並べ替えて上から見る、という使い方が最初にやりたくなることです。ただこれまで何度も、その並びが意味を持たない場面に出会ってきました。今回は1兆円という、いちばん目立つ場所でそれが起きています。

数えることはできます。数えた結果に意味があるかどうかは、別の話でした。

数字と出典

会社所在地売上高(億円)売上の出典従業員1人当たり(万円)創業性格主力
サントリーホールディングス大阪市北区34,324.82025年12月期・連結(酒税込)41,6288,2461899独立した事業会社酒類・飲料
竹中工務店大阪市中央区16,1482025年12月期・連結14,00611,5291610独立した事業会社建築・土木
ヒノマル熊本市中央区12,8492025年3月期(数字に疑い)602,141,5001947数字が成り立たない肥料・園芸資材の卸
ヤンマーホールディングス大阪市北区10,222.82023年3月期・連結20,9584,8781912独立した事業会社エンジン・農機・建機

31社という数と、その内訳の分類は、企業リストに対する私の集計と読みです。 売上高1兆円以上・非上場・本社が東京以外という条件で抽出しました。分類(相互会社/協同組合/子会社/特殊会社/消滅)は各社の性格についての私の判断で、31社すべてを個別に確認したわけではありません。 一社ずつ確かめたのは、記事で扱った4社だけです。

サントリーホールディングス・竹中工務店・ヤンマーホールディングス・ヒノマルの売上高・従業員数・設立年・株主構成、サントリーが株式を公開しない理由は、いずれも Wikipedia 日本語版の記載に拠ります。

ヒノマルの1兆2,849億円は成り立たないと書きましたが、正しい額は確認できていません。 記事の企業情報欄に「1,284,900百万円」とあり、従業員が約60名であることから、桁の誤りと考えられる、というところまでです。私が計算し直した数字を代わりに置くこともしていません。

企業リストと記事で数字が大きく食い違う社があります。

会社リストの値記事の値
竹中工務店1兆3,754億円(2000年)1兆6,147億9,900万円(2025年12月期)
サントリーHD2兆9,701億円(2022年)3兆4,324億8,300万円(2025年12月期)

サントリーの売上高は酒税込みの数字です。酒税控除後は3兆701億2,000万円(2025年12月期)で、他社の売上高と並べるときは注意が要ります。

ヤンマーホールディングスの数字は2023年3月期で、他の3社より新しくありません。

4社は、公的オープンデータから作った企業リストから選んでいます。

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