ニシナもロビンソン百貨店も、いま百貨店ではない

  2026年09月15日 00:01

地方の百貨店を書こうと思いました。街の中心にあって、名前が土地と結びついていて、いま苦しいと言われている業種です。

企業リストで「百貨店」を含む社名を引いて、地方の会社を6社選びました。そして一社ずつ確かめました。

いま百貨店だったのは、3社だけでした。

大丸(札幌)は、紙の卸だった

いちばん驚いたのがこれです。

企業リストに「株式会社大丸・北海道・433億円」という行があります。私はこれを、大丸松坂屋の札幌店に関係する会社だと思って開きました。

まったく別の会社でした。

本社は北海道札幌市白石区菊水3条1丁目。1922年5月10日に株式会社藤井商店として設立され、事業内容はこうです。

洋紙、板紙、文具、事務用品、紙製品、情報機器、オフィス家具、インテリア、化成品、包装資材、FA機器などの販売及び店舗設備、環境設計

卸商社です。 売上高433億7,000万円(2024年6月期)、従業員620名。

そして記事にはこう明記されていました。

大丸松坂屋百貨店とは資本関係等の一切無い別会社である

社名が同じで、業種が違い、資本関係もない。企業リストの行には「小売業」としか書かれていないので、開くまで分かりませんでした。

仁科百貨店は、スーパーマーケットだった

もう1社。企業リストの「株式会社 仁科百貨店・岡山県・295億円・従業員1,779名」です。

295億円に対して1,779名。1人当たり1,658万円で、百貨店としては人が多すぎます。気になって調べました。

現在の社名は株式会社ニシナ。本社は岡山県倉敷市連島町、1949年8月1日設立。事業はスーパーマーケットチェーンでした。売上高302億円(2025年2月期)、従業員1,565名。

かつての社名が「仁科百貨店」で、いまは食品スーパーを展開しています。 社名だけが昔のまま企業リストに残っていました。

1人当たりが低かったのは、百貨店として効率が悪いからではなく、百貨店ではなかったからです。パチンコホールのときと同じで、数字の異様さは業種の取り違えを教えてくれました。

ロビンソン百貨店は、17年前に解散していた

企業リストの「株式会社ロビンソン百貨店・埼玉県・414億円・2008年」。

この会社は2009年9月1日に、そごう・西武に吸収合併されて解散しています。1984年10月31日に株式会社ロビンソン・ジャパンとして設立された会社でした。

店舗のその後も記録されていました。春日部店が2016年2月29日に閉店、小田原店が2018年2月28日に閉店。2013年3月1日には残った店舗が「西武」ブランドへ転換されています。

会社も店も、もうありません。 これまでにも幸陽船渠、有村産業、青森罐詰と、リストに残る消えた会社に出会ってきました。4社目です。

いまも百貨店別の業種になっている解散した
0200400井筒屋/北九州市小倉北区/売上高 505.3億円(2021年2月期・連結)井筒屋505藤崎/仙台市青葉区/売上高 443.5億円(2018年2月期)藤崎444大丸/札幌市白石区/売上高 433.7億円(2024年6月期)大丸434ロビンソン百貨店/埼玉県春日部市/売上高 414億円(2008年2月期)ロビンソン百貨店414ニシナ/岡山県倉敷市/売上高 302億円(2025年2月期)ニシナ302東武宇都宮百貨店/栃木県宇都宮市/売上高 269億円(2024年2月期)東武宇都宮百貨店269億円
「百貨店」で引いた6社の売上高(億円)。決算期は社ごとに異なり、ロビンソン百貨店は解散前の2008年2月期です。

残った3社は、持ち主が違った

いま百貨店だった3社も、所有の形はそれぞれ違いました。

藤崎(仙台市青葉区)は1912年(明治45年)2月11日設立。売上高443億5,200万円(2018年2月期)、従業員約730人。本店のほか、青森県を除く東北地方に18の地域店舗を展開しています。

この会社はオーナー企業でした。創業家が発行済株式の約47%を保有しており、主要株主は藤崎三郎助32.61%、藤崎千代14.83%、藤崎共済会5.21%。本店は「東北地方の百貨店では売上額はトップ」とされています。

東武宇都宮百貨店(栃木県宇都宮市)は1958年6月2日設立、269億円(2024年2月期)、従業員220名(正社員のみ)、百貨店2店舗と小型店舗1店舗。東武鉄道の100%子会社です。

地方私鉄の記事で、鉄道会社が百貨店やスーパーを持っていることを書きました。宇都宮のこれも同じ形です。

そして井筒屋(北九州市小倉北区)。1935年7月30日に株式会社井筒屋百貨店として設立、連結505億3,400万円(2021年2月期)、連結794人。

ただしこの会社は、東証スタンダードと福証に上場しています。 福証が1961年12月1日、東証が1972年9月1日の上場です。

企業リストは非上場企業として拾っていますが、誤りです。

いまも百貨店別の業種になっている解散した
19001925195019752000藤崎/1912年/百貨店(創業家が約47%)藤崎大丸/1922年/紙・文具の卸商社大丸井筒屋/1935年/百貨店(上場企業)井筒屋ニシナ/1949年/スーパーマーケットニシナ東武宇都宮百貨店/1958年/百貨店(東武鉄道100%)東武宇都宮百貨店ロビンソン百貨店/1984年/2009年に解散ロビンソン百貨店
設立年。1912年の藤崎から1984年のロビンソン百貨店(当時はロビンソン・ジャパン)まで。

社名は、いつの事実か分からない

調べ終えて残ったのは、こういうことでした。

企業リストは社名で引きます。私も「百貨店」という語で6社を選びました。しかしその6社は、

  • 百貨店だった会社(ロビンソン百貨店・解散)
  • 百貨店をやめた会社(ニシナ・スーパーへ)
  • 最初から百貨店ではない会社(大丸札幌・紙の卸)
  • いまも百貨店の会社(藤崎・東武宇都宮・井筒屋)

が混ざっていました。社名は、その会社がいつか何であったかを示すだけで、いま何であるかを示しません。

これまでこのブログでは、年次が壊れている、売上高の定義が違う、載っていないものがあると書いてきました。今回は社名そのものが古いという話です。

企業リストの1行から分かることは、思っていたより少ない。社名も、業種の欄も、当てになりません。 開いて確かめるまでは。

数字と出典

会社所在地売上高(億円)売上の出典従業員1人当たり(万円)創業現在の姿主力
井筒屋北九州市小倉北区505.32021年2月期・連結7946,3641935いまも百貨店百貨店(上場企業)
藤崎仙台市青葉区443.52018年2月期7306,0751912いまも百貨店百貨店(創業家が約47%)
大丸札幌市白石区433.72024年6月期6206,9951922別の業種になっている紙・文具の卸商社
ロビンソン百貨店埼玉県春日部市4142008年2月期1,4952,7691984解散した2009年に解散
ニシナ岡山県倉敷市3022025年2月期1,5651,9301949別の業種になっているスーパーマーケット
東武宇都宮百貨店栃木県宇都宮市2692024年2月期22012,2271958いまも百貨店百貨店(東武鉄道100%)

各社の売上高・従業員数・設立年・本社所在地・資本関係、大丸(札幌)が大丸松坂屋百貨店と資本関係のない別会社であること、ロビンソン百貨店の解散(2009年9月1日)と店舗の閉店(春日部2016年2月29日、小田原2018年2月28日)、藤崎の株主構成、井筒屋の上場市場と上場年は、いずれも Wikipedia 日本語版の記載に拠ります。

井筒屋は上場企業です。 東証スタンダードと福証に上場しており、企業リストが非上場として拾っているのは誤りです。この記事では、リストの誤りを示すために含めています。

企業リストと記事で数字が食い違う社があります。

会社リストの値記事の値
大丸(札幌)434億円・3,292名433億7,000万円・620名
ニシナ295億円・1,779名302億円・1,565名

とくに大丸の従業員数は5倍以上違います。 どちらが正しいかは判断できていません。記事側の数字を採りました。

藤崎の443億5,200万円は2018年2月期で、8年前の数字です。

「百貨店」で引いた6社という選び方は、私の恣意です。 リストには他にも百貨店を名乗る会社があり、地方の非上場という条件でも今回の6社が全てではありません。「6社中3社が百貨店ではなかった」を割合として読まないでください。

6社は、公的オープンデータから作った企業リストから選んでいます。

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