コスモス薬品は食品比率67%で、調剤をやっていない

  2026年09月16日 00:01

企業リストでドラッグストアを売上高順に並べたとき、本社の所在地に目が行きました。

会社売上高本社
ウエルシアホールディングス1兆2,850億円東京都
コスモス薬品9,650億円福岡県
スギホールディングス8,780億円愛知県
ツルハホールディングス8,456億円北海道
サンドラッグ8,018億円東京都
クスリのアオキ4,369億円石川県
ドラッグストアモリ2,281億円福岡県
ゲンキー1,849億円福井県
中部薬品1,782億円岐阜県
杏林堂薬局1,386億円静岡県

東京発は2社だけでした。福岡、愛知、北海道、石川、福井、岐阜、静岡。とくに石川県(人口約110万人)と福井県(約75万人)から、4,369億円と1,849億円の会社が出ています。

なぜ地方から出るのか。調べたら、業態そのものが想像と違いました。

食品比率67%、調剤なし

ゲンキー(福井県坂井市丸岡町)の記事を読んで、認識が変わりました。

ゲンキーの業態

  • 「小商圏フォーマット」を採用し、商圏人口7,000人程度を想定
  • 約300坪の標準化された店舗を基本形式にする
  • 食品の取扱比率が67%超(一般的なドラッグストアは10〜30%)
  • 調剤業務は行っていない

食品が3分の2を占めていて、調剤薬局はやっていません。 売上の内訳としては、薬を売る店ではなく食品を売る店です。

コスモス薬品(福岡市博多区)も同じ方向でした。記事には「フード&ドラッグ」の代表格とあり、1,000〜2,000平方メートルの大型店に特化して、定番商品に絞りつつ食品も多数品揃えする、と書かれています。売上高は2024年5月期で9,649億8,900万円、2025年5月期に1兆円を初めて突破しました。

クスリのアオキ(石川県白山市横江町)は連結5,014億7,000万円(2025年5月期)。近年は食品部門の強化により「食品強化型のドラッグストアへと転換」したと記載されています。

看板は薬局ですが、中身は食品スーパーに近い。 これが3社に共通していました。

商圏人口7,000人という単位

もう一つの共通点が、出店の仕方です。

ゲンキーは商圏人口7,000人を想定した小商圏フォーマット。コスモス薬品は「徹底した小商圏ドミナント戦略」。クスリのアオキも「限られた商圏で集中的に出店するドミナント戦略」と書かれています。

狭い範囲に、標準化した店を密に出す。

ゲンキーの店舗分布を見ると、この形がはっきりします。521店舗(2026年4月30日時点)のうち、

県店舗数
愛知県179店
岐阜県142店
福井県90店
石川県73店
滋賀県37店

5県だけです。 福井の会社ですが、いちばん店が多いのは愛知県でした。隣接する県へ、面で広げていく形になっています。

商圏人口7,000人という単位で成立する業態なら、地価が高く商圏が重なり合う東京より、地方のほうが出しやすい——と書きたくなりますが、そう説明した資料には当たっていません。事実として言えるのは、この業態が小商圏を前提にしていることと、上位10社のうち8社が東京以外に本社を置いていることまでです。

上場企業上場持株会社の事業会社
02,0004,0006,0008,000コスモス薬品/福岡市博多区/売上高 9649.9億円(2024年5月期・連結)コスモス薬品9,650クスリのアオキ/石川県白山市/売上高 5014.7億円(2025年5月期・連結)クスリのアオキ5,015ドラッグストアモリ/福岡県朝倉市/売上高 2281億円(2026年3月期)ドラッグストアモリ2,281ゲンキー/福井県坂井市/売上高 1848.6億円(2024年6月期・連結)ゲンキー1,849億円
今回一社ずつ確かめた4社の売上高(億円)。決算期は社ごとに異なります。コスモス薬品は2025年5月期に1兆円を突破しています。

1869年の薬種商と、1990年の会社

創業年を見ると、幅がありました。

クスリのアオキの創業は1869年(明治2年)、薬種商としてです。株式会社クスリのアオキの設立が1985年1月26日、持株会社が1999年7月30日。157年前から薬を扱っている会社が、いまは食品強化型のドラッグストアを約1,000店舗運営しています。

対してゲンキー株式会社の設立は1990年9月28日、持株会社のGenky DrugStores株式会社が2017年12月21日。コスモス薬品は1973年2月に宇野回天堂薬局として創業し、1983年12月3日に有限会社として設立されています。

ドラッグストアモリ(福岡県朝倉市一木)は1983年4月創業、1988年3月設立。2,281億円(2026年3月期)、従業員8,986名、434店舗を九州全県・沖縄・山口・愛媛・徳島・宮城に展開しています。ナチュラルホールディングスの子会社です。

上場企業上場持株会社の事業会社
1850190019502000クスリのアオキ/1869年/食品強化型 約1,000店クスリのアオキコスモス薬品/1973年/フード&ドラッグ 約1,500店コスモス薬品ドラッグストアモリ/1983年/九州中心 434店ドラッグストアモリゲンキー/1990年/小商圏フォーマット 521店ゲンキー
創業年。1869年のクスリのアオキ(薬種商として)から1990年のゲンキーまで、121年の幅があります。

コスモス薬品には、もう一つ目を引く記述がありました。「M&Aは創業以来一切なし」。約1,500店舗を、すべて自前で出しています。

非上場に見えるのは、事業会社だから

最後に、このブログの前提に関わる話です。

企業リストは「非上場」で絞っていますが、今回の4社のうちコスモス薬品は上場企業です(2004年11月マザーズ、2006年5月に東証一部)。クスリのアオキも上場企業で、東証スタンダードと名証メインに上場しています。

ではなぜリストに載るのか。リストに入っているのは持株会社ではなく、その下の事業会社だからです。

  • 株式会社クスリのアオキホールディングス(上場) → 株式会社クスリのアオキ(リストに載る)
  • Genky DrugStores株式会社(持株会社) → ゲンキー株式会社(リストに載る)
  • 株式会社ツルハホールディングス → 株式会社ツルハ(リストに載る)

医薬品卸の記事で「本社が東京以外は資本が地元にあることを意味しない」と書きました。今回はさらに手前で、「非上場」が「市場の目が入っていない」を意味しないという話です。親が上場していれば、開示も監査も市場の評価も及んでいます。

企業リストの「非上場」欄は、その法人が上場しているかどうかしか見ていません。

数字と出典

会社所在地売上高(億円)売上の出典従業員1人当たり(万円)創業上場の形主力
コスモス薬品福岡市博多区9,649.92024年5月期・連結4,87219,8071973上場企業フード&ドラッグ 約1,500店
クスリのアオキ石川県白山市5,014.72025年5月期・連結5,6278,9121869上場持株会社の事業会社食品強化型 約1,000店
ドラッグストアモリ福岡県朝倉市2,2812026年3月期8,9862,5381983上場持株会社の事業会社九州中心 434店
ゲンキー福井県坂井市1,848.62024年6月期・連結7,3612,5111990上場持株会社の事業会社小商圏フォーマット 521店

各社の売上高・従業員数・創業年・設立年・本社所在地・店舗数・出店戦略、ゲンキーの食品比率67%超と商圏人口7,000人、コスモス薬品の「フード&ドラッグ」とM&Aを行っていないこと、クスリのアオキの食品強化型への転換は、いずれも Wikipedia 日本語版の記載に拠ります。

冒頭の10社の表は、企業リストの値をそのまま引いたものです。 記事で扱った4社以外は個別に取り直していません。年次の誤りを含む可能性があります。なお表のクスリのアオキは4,369億円ですが、記事では連結5,014億7,000万円(2025年5月期)でした。

従業員数の基準が社ごとに違います。 ゲンキーの7,361名は全従業員(正社員は1,614名)、コスモス薬品の4,872人は2021年5月31日現在で売上高(2024年5月期)と3年ずれています。この記事では1人当たり売上高を出していません。

「地価が高く商圏が重なり合う東京より地方のほうが出しやすい」は私の推測で、本文に書いたとおり資料の裏付けはありません。

コスモス薬品とクスリのアオキは上場企業です。 企業リストに載っているのは、その傘下の事業会社です。この記事では、リストの「非上場」欄が何を見ているかを示すために含めています。

4社は、公的オープンデータから作った企業リストから選んでいます。

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