2026年09月16日 00:01
企業リストでドラッグストアを売上高順に並べたとき、本社の所在地に目が行きました。
| 会社 | 売上高 | 本社 |
|---|---|---|
| ウエルシアホールディングス | 1兆2,850億円 | 東京都 |
| コスモス薬品 | 9,650億円 | 福岡県 |
| スギホールディングス | 8,780億円 | 愛知県 |
| ツルハホールディングス | 8,456億円 | 北海道 |
| サンドラッグ | 8,018億円 | 東京都 |
| クスリのアオキ | 4,369億円 | 石川県 |
| ドラッグストアモリ | 2,281億円 | 福岡県 |
| ゲンキー | 1,849億円 | 福井県 |
| 中部薬品 | 1,782億円 | 岐阜県 |
| 杏林堂薬局 | 1,386億円 | 静岡県 |
東京発は2社だけでした。福岡、愛知、北海道、石川、福井、岐阜、静岡。とくに石川県(人口約110万人)と福井県(約75万人)から、4,369億円と1,849億円の会社が出ています。
なぜ地方から出るのか。調べたら、業態そのものが想像と違いました。
ゲンキー(福井県坂井市丸岡町)の記事を読んで、認識が変わりました。
ゲンキーの業態
食品が3分の2を占めていて、調剤薬局はやっていません。 売上の内訳としては、薬を売る店ではなく食品を売る店です。
コスモス薬品(福岡市博多区)も同じ方向でした。記事には「フード&ドラッグ」の代表格とあり、1,000〜2,000平方メートルの大型店に特化して、定番商品に絞りつつ食品も多数品揃えする、と書かれています。売上高は2024年5月期で9,649億8,900万円、2025年5月期に1兆円を初めて突破しました。
クスリのアオキ(石川県白山市横江町)は連結5,014億7,000万円(2025年5月期)。近年は食品部門の強化により「食品強化型のドラッグストアへと転換」したと記載されています。
看板は薬局ですが、中身は食品スーパーに近い。 これが3社に共通していました。
もう一つの共通点が、出店の仕方です。
ゲンキーは商圏人口7,000人を想定した小商圏フォーマット。コスモス薬品は「徹底した小商圏ドミナント戦略」。クスリのアオキも「限られた商圏で集中的に出店するドミナント戦略」と書かれています。
狭い範囲に、標準化した店を密に出す。
ゲンキーの店舗分布を見ると、この形がはっきりします。521店舗(2026年4月30日時点)のうち、
| 県 | 店舗数 |
|---|---|
| 愛知県 | 179店 |
| 岐阜県 | 142店 |
| 福井県 | 90店 |
| 石川県 | 73店 |
| 滋賀県 | 37店 |
5県だけです。 福井の会社ですが、いちばん店が多いのは愛知県でした。隣接する県へ、面で広げていく形になっています。
商圏人口7,000人という単位で成立する業態なら、地価が高く商圏が重なり合う東京より、地方のほうが出しやすい——と書きたくなりますが、そう説明した資料には当たっていません。事実として言えるのは、この業態が小商圏を前提にしていることと、上位10社のうち8社が東京以外に本社を置いていることまでです。
創業年を見ると、幅がありました。
クスリのアオキの創業は1869年(明治2年)、薬種商としてです。株式会社クスリのアオキの設立が1985年1月26日、持株会社が1999年7月30日。157年前から薬を扱っている会社が、いまは食品強化型のドラッグストアを約1,000店舗運営しています。
対してゲンキー株式会社の設立は1990年9月28日、持株会社のGenky DrugStores株式会社が2017年12月21日。コスモス薬品は1973年2月に宇野回天堂薬局として創業し、1983年12月3日に有限会社として設立されています。
ドラッグストアモリ(福岡県朝倉市一木)は1983年4月創業、1988年3月設立。2,281億円(2026年3月期)、従業員8,986名、434店舗を九州全県・沖縄・山口・愛媛・徳島・宮城に展開しています。ナチュラルホールディングスの子会社です。
コスモス薬品には、もう一つ目を引く記述がありました。「M&Aは創業以来一切なし」。約1,500店舗を、すべて自前で出しています。
最後に、このブログの前提に関わる話です。
企業リストは「非上場」で絞っていますが、今回の4社のうちコスモス薬品は上場企業です(2004年11月マザーズ、2006年5月に東証一部)。クスリのアオキも上場企業で、東証スタンダードと名証メインに上場しています。
ではなぜリストに載るのか。リストに入っているのは持株会社ではなく、その下の事業会社だからです。
医薬品卸の記事で「本社が東京以外は資本が地元にあることを意味しない」と書きました。今回はさらに手前で、「非上場」が「市場の目が入っていない」を意味しないという話です。親が上場していれば、開示も監査も市場の評価も及んでいます。
企業リストの「非上場」欄は、その法人が上場しているかどうかしか見ていません。
| 会社 | 所在地 | 売上高(億円) | 売上の出典 | 従業員 | 1人当たり(万円) | 創業 | 上場の形 | 主力 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| コスモス薬品 | 福岡市博多区 | 9,649.9 | 2024年5月期・連結 | 4,872 | 19,807 | 1973 | 上場企業 | フード&ドラッグ 約1,500店 |
| クスリのアオキ | 石川県白山市 | 5,014.7 | 2025年5月期・連結 | 5,627 | 8,912 | 1869 | 上場持株会社の事業会社 | 食品強化型 約1,000店 |
| ドラッグストアモリ | 福岡県朝倉市 | 2,281 | 2026年3月期 | 8,986 | 2,538 | 1983 | 上場持株会社の事業会社 | 九州中心 434店 |
| ゲンキー | 福井県坂井市 | 1,848.6 | 2024年6月期・連結 | 7,361 | 2,511 | 1990 | 上場持株会社の事業会社 | 小商圏フォーマット 521店 |
各社の売上高・従業員数・創業年・設立年・本社所在地・店舗数・出店戦略、ゲンキーの食品比率67%超と商圏人口7,000人、コスモス薬品の「フード&ドラッグ」とM&Aを行っていないこと、クスリのアオキの食品強化型への転換は、いずれも Wikipedia 日本語版の記載に拠ります。
冒頭の10社の表は、企業リストの値をそのまま引いたものです。 記事で扱った4社以外は個別に取り直していません。年次の誤りを含む可能性があります。なお表のクスリのアオキは4,369億円ですが、記事では連結5,014億7,000万円(2025年5月期)でした。
従業員数の基準が社ごとに違います。 ゲンキーの7,361名は全従業員(正社員は1,614名)、コスモス薬品の4,872人は2021年5月31日現在で売上高(2024年5月期)と3年ずれています。この記事では1人当たり売上高を出していません。
「地価が高く商圏が重なり合う東京より地方のほうが出しやすい」は私の推測で、本文に書いたとおり資料の裏付けはありません。
コスモス薬品とクスリのアオキは上場企業です。 企業リストに載っているのは、その傘下の事業会社です。この記事では、リストの「非上場」欄が何を見ているかを示すために含めています。
4社は、公的オープンデータから作った企業リストから選んでいます。
Share Me!