ユニバースもマルナカも、看板は残って会社が先に消えた

  2026年09月17日 00:01

出張や引っ越しで県をまたぐと、スーパーの名前が変わります。青森ではユニバースとカブセンター、富山では大阪屋ショップ、長野ではツルヤ、広島ではエブリイ。全国チェーンに飲み込まれた、という話をよく聞くわりに、店頭の景色は県ごとにはっきり違います。

地元の会社が残っている証拠だと思っていました。

公的なオープンデータで作った企業リストから食品スーパーを22社拾って、県ごとの顔ぶれを並べるつもりでした。実際に始めてみると、そういう記事にはなりませんでした。

リストの「マルナカ」を開いたら、北海道の乾麺の会社だった

拾い始めてすぐ、妙なことが起きました。

香川県高松市の株式会社マルナカ、1,777億円。リストからWikipediaの記事に飛ぶと、北海道江別市の乾麺メーカーの説明が出てきました。同じ社名の、まったく別の会社です。

同じことが続きました。大阪の株式会社万代(3,863億円)は宮城県のリユース&アミューズメント店に、栃木県宇都宮市の株式会社オータニ(295億円)は岐阜市の学生服メーカーに繋がっていました。

スーパーの社名は短くて、ありふれています。マルナカ、万代、オータニ、タイヨー。社名で機械的に突き合わせると、同名の別会社が混ざります。以前は数字の「年次」が壊れている例を追いましたが、今度は社名のほうでした。

繋ぎ直すために、22社の沿革を一つずつ読むことになりました。それで、探していたのとは違うものが見えました。

八戸のスーパーの親会社は、札幌にある

看板が地元でも、会社が地元とは限りません。

青森県八戸市のユニバース。1967年設立で、2007年に東証二部へ上場しました。青森県で銀行以外の企業としては初めての東証上場企業だったと記録されています。八戸の会社です。

ただし2011年10月21日、株式交換でアークスの完全子会社になりました。その3日前に上場も廃止しています。アークスは札幌市に本社を置く持株会社です。

Wikipediaの沿革には、続けてこう書かれています。

経営統合後もユニバースの社名・店名は存続している。

買われたことは、屋号には出てきません。

広島市のユアーズ(543億円)も同じです。2015年10月にイズミの連結子会社になり、翌2016年6月には本社をイズミの本社ビルの中へ移しました。同じ時期に、シジシージャパンからも脱退しています。1973年に、大手総合スーパーに対抗するため中堅・中小の食品スーパーが集まって作った共同仕入れの組織です。会社としては、もうイズミの一部です。

青森県むつ市のマエダ(316億円)はもう少し込み入っています。2014年10月、マイヤ(岩手県大船渡市)、おーばん(山形県天童市)、フレスコキクチ(福島県相馬市)と経営統合し、マークスホールディングスの完全子会社になりました。4県、4つの看板、1つの持株会社です。

会社が先に消えて、看板だけが残る

香川のマルナカは、もっと先まで進んでいます。

2010年8月にイオン・三菱商事と包括業務提携、2011年11月にイオンの子会社、2019年3月に株式交換でマックスバリュ西日本の完全子会社。そして2021年2月28日をもって、会社そのものが無くなりました。運営はマックスバリュ西日本へ移り、のちにフジへ引き継がれています。

企業リストに残っている1,777億円は、2019年2月期、つまり消える前の数字です。それでも店の看板は今もマルナカです。

大阪の光洋(KOHYO、1,135億円)も同じ経路をたどりました。1973年に創業家が始めた独立系でしたが、2007年12月にイオンが創業家一族から株式を買い取って子会社化し、2020年3月にダイエーの子会社、そして2026年3月1日にダイエーへ吸収合併されて解散しています。

リストの上では、どちらもまだ生きている会社に見えます。

「八ヶ岳連峰のように」——看板を残すのは、方針だった

一社ずつ見ていると偶然が重なったように読めますが、そうではありませんでした。買う側が、自分でそう書いています。

アークスの傘下でスーパーマーケットを運営している会社は、10社あります。

会社所在地売上高(億円)売上の出典設立資本今の資本/備考
万代大阪府東大阪市3,8632024年2月時点1962全国チェーンの傘下にない万代リテールHDの完全子会社
マルナカ香川県高松市1,777.72019年2月期1952会社が無くなった2021年2月末で消滅
ユニバース青森県八戸市1,513.12026年2月期1967他社の傘下に入ったアークス(札幌)2011年
エブリイ広島県福山市1,1542025年6月期1989全国チェーンの傘下にないエブリイホーミイHD
光洋大阪府茨木市1,1352018年2月期1973会社が無くなった2026年3月にダイエーへ
サンリブ福岡県北九州市1,130.92026年2月期1955全国チェーンの傘下にない九州資本で最大手
さとう京都府福知山市1,1242026年2月期(連結)1950全国チェーンの傘下にない創業1666年
ツルヤ長野県小諸市1,0672021年6月末時点1950全国チェーンの傘下にない創業1892年・海産肥料商
丸久山口県防府市957.32021年2月期(単独)2015全国チェーンの傘下にないリテールパートナーズの母体
アオキスーパー愛知県名古屋市912.72023年2月期1974全国チェーンの傘下にない2024年にMBOで非公開化
大阪屋ショップ富山県富山市8702022年6月期(連結)1973全国チェーンの傘下にない県内スーパーを買う側
マルキョウ福岡県大野城市8242020年2月期1964他社の傘下に入ったリテールパートナーズ 2017年
ユアーズ広島県広島市5432015年9月期(連結)1979他社の傘下に入ったイズミ(広島)2015年
東光ストア北海道札幌市5222007年度1972他社の傘下に入ったアークス(札幌)2009年
紅屋商事青森県青森市4722022年3月期1959全国チェーンの傘下にないカブセンター・ベニーマート
ウジエスーパー宮城県登米市3462019年2月期1982全国チェーンの傘下にないCGC加盟(創業1947年)
マエダ青森県むつ市316.52019年3月実績1977他社の傘下に入ったマークスHD 2014年
オータニ栃木県宇都宮市2952022年2月期1982他社の傘下に入ったアークス(札幌)2021年
マイヤ岩手県大船渡市1952017年3月期1961他社の傘下に入ったマークスHD 2014年
キヌヤ島根県益田市1512022年2月1951全国チェーンの傘下にないCGC加盟(創業1935年)
フレスコキクチ福島県相馬市1312015年3月期1950他社の傘下に入ったマークスHD 2014年
おーばん山形県天童市100年次不明1984他社の傘下に入ったマークスHD 2014年
企業リストから拾った食品スーパー22社。売上高は決算期がそろっていないので、年月まで併記しています。従業員数は載せていません(後述)。

ラルズ、東光ストア、道東アークス、福原、道北アークス、道南ラルズ(以上は北海道)、ユニバース、ベルジョイス、伊藤チェーン(以上は東北)、そしてオータニ(栃木・埼玉)。全部、別の社名のままです。

同社はこの形を、こう説明しています。

富士山のように高くそびえる大きな一つの企業体ではなく、八ヶ岳連峰のように同じ高さの山々(=傘下の各食品スーパー)が連なる企業連合を目指している

八ヶ岳連峰。北海道から栃木まで、県ごとに看板が違うのは、統合しそこねた名残ではありません。そういう形を選んだ結果です。

山口県防府市のリテールパートナーズも同じ書き方をします。丸久(山口)、マルミヤストア(大分)、マルキョウ(福岡)を傘下に置きながら、「経営統合後も各社が独立性を持って運営し」と説明しています。

もっとも、22社のうち11社は、まだ全国チェーンの傘下に入っていません。大阪の万代(3,863億円)、広島のエブリイ(1,154億円)、長野のツルヤ(1,067億円)、京都のさとう(1,124億円、創業1666年)、福岡のサンリブ(1,131億円)。富山の大阪屋ショップ(870億円)にいたっては、県内のスーパーを買い足していく側です。県民の台所が全部よそのものになった、という話ではありません。

ただ、屋号を見ているかぎり、22社のどれがどちらなのかは区別がつきません。

統合は、屋号には出てこない

県境を越えると名前が変わる、あの感覚は間違っていませんでした。看板は本当に県ごとに違います。

違っていたのは、その意味のほうです。看板が違うことは、地元の会社が残っている印ではありませんでした。買った側が、看板を残すからです。ユニバースの株主は2011年に八戸から札幌へ移り、マルナカは2021年に会社ごと無くなり、それでも店の名前は変わっていません。

群馬の3つのチェーンを調べたときは、同じ会社から出た3つの看板が、同じ系列だと気づかせないまま全国に散っていました。今回はその逆で、別々に始まった看板が、気づかせないまま一つの資本の下に集まっています。どちらも、屋号からは分かりません。

数字と出典

22社は、公的オープンデータから作った企業リストから選んでいます。売上高はリストの値で、決算期は各社のWikipedia日本語版の記載に合わせて年月まで書きました。

従業員数と1人当たり売上高は、この記事では出していません。 集計の基準がそろわないためです。マルキョウは522名のほかに「平均臨時従業員数2,750名」が別記され、オータニは正社員385人のみ、キヌヤは「パート645名含むグループ合計」で898名です。同じ列に並べても比較になりません。基準年のずれも大きく、マルナカは売上が2019年2月期で従業員が2008年3月末と、11年離れています。

各社の資本の履歴(ユニバースのアークスによる完全子会社化と上場廃止、マルナカのイオン傘下入りとマックスバリュ西日本への統合、光洋のイオン・ダイエー傘下入りと2026年3月の吸収合併、ユアーズのイズミによる連結子会社化とシジシージャパン脱退、マエダら4社の経営統合とマークスホールディングス設立、マルキョウのリテールパートナーズによる完全子会社化、アオキスーパーの2024年のMBOと上場廃止)は、いずれもWikipedia日本語版の各社の記事に拠ります。一次資料(有価証券報告書・決算公告・各社サイト)では取り直していません。

アークスの「八ヶ岳連峰」の一節と、傘下スーパー10社の顔ぶれは、Wikipedia日本語版「アークス (北海道の企業)」の記載に拠ります。リテールパートナーズの「各社が独立性を持って運営し」も同様です。

「全国チェーンの傘下にない」11社について、株主名簿を確認したわけではありません。 Wikipediaの沿革に資本の移動の記載が見当たらない、というだけです。万代は万代リテールホールディングスの、エブリイはエブリイホーミイホールディングスの傘下にあり、いずれも持株会社の名前より先の株主は追えていません。アオキスーパーは2024年2月に株式会社青木商店がMBOとして公開買付を実施し、同年5月に上場を廃止しています。資本は動いていますが、行き先が全国チェーンではないので、この分類に入れました。

社名の誤突合3件(マルナカ→北海道江別市の製麺メーカー、万代→宮城県の万代、オータニ→岐阜市の学校制服メーカー)は、企業リストの生成過程で法人番号や社名から Wikipedia 記事を紐づけた結果です。リスト側の不備で、各社の実在や数字には関係ありません。

紅屋商事の売上高472億円は、企業リスト上の年次が2003年になっています。 Wikipediaの記載は2022年3月期なので、表は2022年3月期としました。同じ形の食い違いは別の記事でも扱っています。

表の「設立」は創業年ではなく法人の設立年です。 さとうの創業は1666年、ツルヤは1892年、アオキスーパーは1941年、ウジエスーパーは1947年、キヌヤは1935年で、設立年とは離れています。丸久の2015年は、2015年の会社分割で現在の法人ができたためで、事業の創業は1954年です。

おーばんの100億円には年次がありません。 Wikipedia側にも決算期の記載がないため、そのままにしています。

Share Me!