ワークマンとカインズとベイシアは、同じグループだった

  2026年09月11日 00:00

企業リストを業種で小売業に絞り、売上高順に眺めていたときのことです。

上位に並ぶ社名の所在地が、妙でした。ヤマダデンキ(群馬)。ヤオコー(埼玉)。しまむら(埼玉)。カインズ(埼玉)。ベイシア(群馬)。

群馬県の人口は1,865,187人(2026年8月1日の推計)。2020年の国勢調査では194万333人で、47都道府県中18位でした。それなのに、日本を代表する小売チェーンの本社がここに集まっている。

群馬から、1兆円級が2つ出ている

まず規模を確かめました。

ヤマダホールディングスは群馬県高崎市栄町。連結売上高1兆6,918億円(2026年3月期)、連結従業員2万6,747名。1973年4月に山田昇が前橋市で「ヤマダ電化サービス」を個人創業したのが始まりで、2000年に上場しています。企業リストに載っている「ヤマダデンキ」(1兆2,437億円)は、その事業会社です。

もう1つがベイシアグループ。こちらは2020年に年間総売上1兆円を突破しています。

人口190万人の県から、1兆円規模の小売グループが2つ出ている。それだけでも十分に妙な話ですが、驚いたのはこの先でした。

3つの店が、同じグループだった

ベイシアグループを構成する会社を見て、手が止まりました。

ベイシアグループの主な会社

  • ベイシア ― ショッピングセンター・スーパーマーケット
  • カインズ ― ホームセンター
  • ワークマン ― 作業服チェーン
  • ハンズ ― ホームセンター・雑貨
  • ベイシア電器 ― 家電量販
  • オートアールズ ― カー用品
  • セーブオン ― コンビニエンスストア(2026年に撤退予定)

ワークマンとカインズが同じグループです。

作業服の専門店と、休日に日用品を買うホームセンター。売っているものも客層も違います。関係があるとは考えたこともありませんでした。

そして起源をたどると、1958年、群馬県伊勢崎市。創業者は土屋嘉雄で、グループは「株式会社いせや」を起源とする企業集合体です。持株会社が上に立って統括する形ではありません。

伊勢崎の一軒の店から、いま合わせて1兆円を超える小売グループが出ています。

ベイシアグループヤマダグループそれ以外
02,5005,0007,50010,000ヤマダデンキ/群馬県高崎市/売上高 12437億円(2026年3月期)ヤマダデンキ12,437カインズ/埼玉県本庄市/売上高 4437億円(2024年2月期・単体)カインズ4,437ベイシア/群馬県前橋市/売上高 3418億円(2025年2月期)ベイシア3,418ワークマン/群馬県伊勢崎市/売上高 1326.5億円(2024年3月期・単独)ワークマン1,327とりせん/群馬県館林市/売上高 1009億円(年次に疑いあり)とりせん1,009フレッセイ/群馬県前橋市/売上高 624億円(2012年度)フレッセイ624億円
群馬・埼玉の小売6社の売上高(億円)。決算期は社ごとに異なります。カインズはグループ計5,423億円、単体4,437億円のうち単体を採りました。

本社の住所が、県境をまたいでいる

グループ3社の本社所在地を並べると、地図が見えてきます。

会社本社
ベイシア群馬県前橋市亀里町900
ワークマン群馬県伊勢崎市柴町1732(関東信越本部)
カインズ埼玉県本庄市早稲田の杜一丁目2番1号

前橋・伊勢崎・本庄。本庄だけが埼玉県ですが、本庄市は伊勢崎市と隣接しています(本庄市の隣接自治体に群馬県伊勢崎市が挙がっています)。県境をまたいでいるだけで、3社は続きの土地に収まっています。

ワークマンには東京本部(台東区)もありますが、群馬側は「関東信越本部」として残っています。本社機能を東京に移しても、元の場所を捨てない。 前に調べた四国中央市で、ユニ・チャームが登記上の本店を産地に残していたのと同じ形です。

従業員332人で1,326億円

ワークマンの数字を見て、もう一度引っかかりました。

売上高1,326億5,100万円(2024年3月期・単独)に対して、従業員332人。

1人当たり約4億円です。前に調べた紙の卸でカミ商事が約5億円、今治の船主の正栄汽船が約5億5,900万円でしたが、小売でこの数字は異質です。

理由は事業の形にあります。ワークマンはフランチャイズシステムによる専門店チェーンで、店舗を運営するのは加盟店です。2020年7月末で880店舗ありますが、その従業員はワークマン本体の332人には含まれません。

同じグループのカインズは239店舗(2024年3月現在)で従業員13,651名、ベイシアは11,515名。直営で運営する会社と、加盟店に運営させる会社が、同じグループの中に並んでいます。

ベイシアグループヤマダグループそれ以外
010,00020,00030,000ワークマン/売上高 1326.5億円 ÷ 従業員 332名ワークマン39,955ヤマダデンキ/売上高 12437億円 ÷ 従業員 8,154名ヤマダデンキ15,253フレッセイ/売上高 624億円 ÷ 従業員 793名フレッセイ7,869カインズ/売上高 4437億円 ÷ 従業員 13,651名カインズ3,250ベイシア/売上高 3418億円 ÷ 従業員 11,515名ベイシア2,968万円
従業員1人当たり売上高(万円)。ワークマンだけ桁が違うのはフランチャイズのためで、効率が良いという意味ではありません。売上と従業員の基準年がずれている社があります(ワークマンは売上2024年3月期・従業員2021年3月末)。

この数字を「ワークマンは効率が良い」と読むと間違えます。 店を動かしている人が数えられていないだけです。1人当たり売上高は、事業の形が違う会社どうしでは比較になりません。

同じ県で、逆を向いた会社もある

群馬の小売がすべて全国に出たわけではありません。

フレッセイは群馬県前橋市力丸町。1850年に鮮魚商として創業し、1950年に法人化しています。群馬を中心に栃木・埼玉北部で51店舗を展開する地域密着のスーパーです。売上高624億900万円(2012年度)、連結従業員793人。

この会社はいま、新潟のアクシアル リテイリングの100%子会社です。

創業1850年。ベイシアグループ(1958年)よりも100年以上早く始まっていて、同じ群馬にいて、いまは県外資本の傘下にあります。全国に出た側と、県外資本に入った側が、同じ県の同じ商圏にいます。

どちらが良いという話ではありません。ただ、企業リストを眺めているだけでは「群馬県のスーパー」として同じ行に並んでしまう会社が、資本の面では正反対だった、ということです。

看板が違うと、同じ会社だと気づかない

調べ終えて残ったのは、単純な事実です。

ホームセンターと、作業服の専門店と、スーパーマーケット。売り場も客層も違う3つの業態が、1958年に伊勢崎で始まった同じ一軒の店から出ています。 店に入っているあいだ、それが同じ会社の系列だと分かる手がかりはどこにもありません。

企業リストを住所で眺めるようになってから、今治市小浦町、富士市比奈、神戸市御影本町と、狭い範囲に会社が密集する形に何度も出会ってきました。群馬のこれは、密集ではなく分岐です。一つの場所から出た会社が、業態を変えながら全国に散っている。

前橋・伊勢崎・本庄という隣り合った3つの市が、どの都道府県の店舗にも繋がっています。

数字と出典

会社所在地売上高(億円)売上の出典従業員1人当たり(万円)創業系列主力
ヤマダデンキ群馬県高崎市12,4372026年3月期8,15415,2531983ヤマダグループ家電量販
カインズ埼玉県本庄市4,4372024年2月期・単体13,6513,2501989ベイシアグループホームセンター
ベイシア群馬県前橋市3,4182025年2月期11,5152,9681997ベイシアグループショッピングセンター
ワークマン群馬県伊勢崎市1,326.52024年3月期・単独33239,9551982ベイシアグループ作業服(FC)
とりせん群馬県館林市1,009年次に疑いあり——1948それ以外スーパーマーケット
フレッセイ群馬県前橋市6242012年度7937,8691850それ以外スーパーマーケット

各社の売上高・従業員数・設立年・本社所在地、ベイシアグループの創業(1958年・群馬県伊勢崎市・土屋嘉雄)と構成、グループ総売上が2020年に1兆円を超えたこと、ワークマンのフランチャイズと店舗数、ヤマダホールディングスの創業(1973年4月・前橋市・山田昇)は、いずれも Wikipedia 日本語版の記載に拠ります。

ワークマンとヤマダホールディングス、およびヤオコー・しまむらは上場企業です。このブログが対象にしている「非上場」からは外れますが、グループや地域の話をするうえで欠かせないので入れています。ベイシアとカインズは非上場です。

基準年がそろっていません。 ワークマンは売上が2024年3月期で従業員が2021年3月末、フレッセイは売上が2012年度で従業員が2013年2月です。1人当たり売上高はこのずれを含んだ数字です。

とりせんの1,009億円は年次に疑いがあります。 企業リスト上は2003年ですが、別の記事で確かめたところ、金額は2026年2月期の決算と円単位まで一致していました。年次のほうが誤っていると考えられます。

カインズの売上高は2つ記載があります。 グループ計5,423億円と単体4,437億円で、企業リストに入っているのは単体のほうです。表もそれに合わせています。

本庄市と伊勢崎市の位置関係は、本庄市の隣接自治体に群馬県伊勢崎市が挙がっていることによります。利根川がどちらの側を流れるかは確認していないので、「川を挟んで」とは書いていません。群馬県の人口と順位も Wikipedia 日本語版の記載に拠ります。

6社は、公的オープンデータから作った企業リストから選んでいます。

Share Me!