2026年09月18日 00:00
公的なオープンデータで作った企業リストを「電気・ガス業」で並べていたら、同じ形の社名が7つ出てきました。
相馬共同火力発電、瀬戸内共同火力、住友共同電力、戸畑共同火力、酒田共同火力発電、大分共同火力、和歌山共同火力。全部、非上場です。
売上高は198億円から1,327億円まで散らばっていますが、そろって目を引いたのは従業員数のほうでした。大分共同火力は76人、酒田共同火力発電は111人、和歌山共同火力は112人。発電所を持って電気を売っている会社の人数には見えません。
社名を1社ずつ開くと、書き出しがほとんど同じでした。
電力会社と、鉄を作る会社です。この組み合わせが4社あります。
残り3社は事情が違いました。相馬共同火力発電は東北電力と東京電力の折半出資で、相手が工場ではありません。住友共同電力は1919年に土佐吉野川水力電気として設立され、1927年に別子鉱業所の自家用の発電設備を譲り受けて事業を始めた会社で、今も新居浜市・西条市の住友グループの工場へ電気と蒸気を送っています。
そして酒田共同火力発電には、少し込み入った経緯がありました。
1973年、山形県の酒田北港にアルミニウム製錬工場を作る計画が動いていました。アルミの製錬には大量の電気が要ります。安い電気をその工場に送るためだけに、東北電力と住軽アルミニウム工業が共同で作ったのが酒田共同火力発電です。
ところが設立の半年後に第四次中東戦争が起き、原油価格が上がりました。石油火力で作った電気でアルミを精錬する採算は崩れ、住軽アルミは1977年に操業を始めたものの赤字が続き、1982年5月31日に解散します。
電気を送る相手が消えました。それでも発電所は残り、1987年7月10日に東北電力の完全子会社になっています。発電した電気は全て東北電力へ行くようになりました。
製鉄所と組んでいる4社のほうに戻ります。沿革を読んでいて、手が止まった行がありました。
大分共同火力の沿革です。
1972年(昭和47年)4月 - 大分共同発電所発足。新日鉄大分製鐵所第1号高炉火入れに合わせて、第1号機営業運転開始(250,000kW)。
高炉に火が入る日に、発電機が回り始めています。
偶然ではありません。燃料を見ると分かります。4社とも、燃料は「副生ガス(高炉ガスなど)」と書かれています。
高炉ガスは、高炉で鉄鉱石を還元して銑鉄を作るときに出てくる副産物です。銑鉄1トンあたり1,500〜2,000立方メートル発生し、一酸化炭素を23〜30%含みます。人体に有毒です。
そして、放っておくわけにいきません。可燃性のガスが炉の頂部から出続けるので、多くは製鉄所の中で熱風炉や焼結炉の燃料として自家消費されます。それでも余ります。
余ったぶんを燃やして電気にするための会社が、共同火力でした。
だから発電所は製鉄所の構内にあります。瀬戸内共同火力の福山共同発電所はJFEスチール西日本製鉄所(福山地区)の構内、倉敷共同発電所は同(倉敷地区)の構内。戸畑共同火力の発電所は日本製鉄八幡製鉄所の構内。大分も和歌山も同じです。
だから、高炉と一緒に動き出します。大分共同火力の設立は1969年11月、新日鉄大分製鐵所の発足は1971年6月、1号機の運転開始は1972年4月。製鉄所を作る計画の一部として、発電会社が別に作られているという順序です。
発電のために作られた会社ではありませんでした。鉄を作ると必ず出てくるものを、捨てずに処理するために作られた会社です。それが、電力会社との合弁という形になっています。
高炉ガスは発熱量が3,100〜3,900kJ/立方メートルと低く、これだけでは燃えにくいので、製鉄所の中ではコークス炉ガスや転炉ガスを混ぜて使います。共同火力の燃料欄に「副生ガス」と複数形で書かれているのは、そのためです。
最初に引っかかったのは、従業員76人という数字でした。
7社の顔ぶれを見終えて思うのは、これを「発電会社」として数えていたのが違ったのだろう、ということです。燃料を掘りに行く必要も、遠くから運ぶ必要もありません。隣の高炉から出続けます。
7社の本社は、相馬、福山、新居浜、北九州、酒田、大分、和歌山。このうち4社の発電所は、製鉄所の構内にあります。電力会社の営業区域で分かれているのではなく、製鉄所のあるところに1社ずつ置かれています。瀬戸内の造船所を調べたときに出てきた福山にも、1社ありました。
企業リストで「共同火力」を7社見つけたとき、電気の会社を7つ見つけたつもりでいました。実際に見つけていたのは、鉄を作る工程の最後の部分を、別会社にしたものでした。
| 会社 | 所在地 | 売上高(億円) | 売上の出典 | 従業員 | 1人当たり(万円) | 設立 | 型 | 出資 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 相馬共同火力発電 | 福島県相馬市 | 1,327.5 | 2026年3月期 | 169 | 78,550 | 1981 | 石炭火力 | 東北電力+東京電力(現JERA) |
| 瀬戸内共同火力 | 広島県福山市 | 993.5 | 2023年3月期 | 340 | 29,221 | 1965 | 製鉄所の構内・副生ガス | JFEスチール+中国電力 |
| 住友共同電力 | 愛媛県新居浜市 | 550.4 | 2026年3月期 | 400 | 13,760 | 1919 | 企業グループ向け | 住友グループ向け |
| 戸畑共同火力 | 福岡県北九州市 | 419 | 2020年3月期 | 142 | 29,507 | 1967 | 製鉄所の構内・副生ガス | 九州電力+八幡製鐵 |
| 酒田共同火力発電 | 山形県酒田市 | 377.6 | 2026年3月期 | 111 | 34,018 | 1973 | 石炭火力 | 東北電力+住軽アルミ→東北電力100% |
| 大分共同火力 | 大分県大分市 | 278 | 2007年3月期 | 76 | 36,579 | 1969 | 製鉄所の構内・副生ガス | 九州電力+富士製鐵 |
| 和歌山共同火力 | 和歌山県和歌山市 | 198.4 | 2025年3月期 | 112 | 17,714 | 1961 | 製鉄所の構内・副生ガス | 関西電力+住友金属工業 |
7社は、公的オープンデータから作った企業リストから選びました。各社の出資関係・沿革・発電所の所在は、いずれもWikipedia日本語版の各社の記事に拠ります。一次資料(有価証券報告書・決算公告・各社サイト)では取り直していません。
高炉ガスの成分(一酸化炭素23〜30%、窒素約60%、二酸化炭素10〜18%)、発生量(銑鉄1トンあたり1,500〜2,000立方メートル)、発熱量(3,100〜3,900kJ/立方メートル)は、Wikipedia日本語版「高炉ガス」の記載に拠ります。
1人当たり売上高は、分子と分母の年次がそろっていません。 そろっているのは酒田共同火力発電(売上2026年3月期・従業員2026年4月1日現在)だけです。相馬共同火力発電は従業員が2024年7月1日現在、住友共同電力は2021年3月31日現在で、売上の2026年3月期とは離れています。瀬戸内・戸畑・大分・和歌山の4社は従業員数の年次がそもそも記載されていません。表の1人当たりは、このずれを含んだ数字です。
2社は、この社名ではもう存在しません。 戸畑共同火力は2024年10月に大分共同火力を吸収合併し、九州共同発電株式会社に商号を変更しています。企業リストに戸畑(419億円・2020年3月期)と大分(278億円・2007年3月期)が別々に載っているのは、リストの元にした記述が合併前のものだからです。
8社目があります。 常磐共同火力は相馬と同じく東北電力・東京電力の共同出資ですが、本社が東京都千代田区で、このブログが対象にしている地方の会社から外れるため入れていません。売上高もリストに入っていません。
住友共同電力は「共同火力」ではありません。 社名の形が同じで、企業グループの工場へ電気を送る点も同じなので並べました。1919年設立で、7社のうち最も古く、水力発電所も持っています。電気と蒸気のほかにCO2も供給していると記載があります。
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