高知県に、旭食品という桁の違う会社がある

  2026年09月14日 00:01

企業リストを都道府県ごとに眺めていて、高知県のところで目が止まりました。

順位会社売上高
1位旭食品6,035億円
2位中澤氏家薬業558億円
3位サニーマート428億円
4位エースワン238億円

1位が2位の10倍以上あります。 これまで他の県では見なかった形です。

高知県は、県内総生産が2兆4,704億円(2022年度)で全国46位、1人当たり県民所得も182.6万円で46位。推計人口は636,316人(2026年8月1日)。その県に、売上6,000億円の会社が1社だけあります。

全国で商売をしていた

旭食品を調べると、まず高知の会社であることは確かでした。本社は高知県南国市領石246番地。1923年10月創業、1956年設立です。

ただし、商売の範囲は高知ではありませんでした。東京、大阪、中国、近畿、九州などに支店を持つ全国規模の卸で、記事には「西日本地区で加藤産業と並ぶ規模」とあります。

つまり6,035億円は、高知県内で生じた売上ではありません。県内総生産2兆4,704億円と並べて「県のGDPの4分の1」と読むのは間違いです。 県内総生産は付加価値の合計で、卸売業の売上高は仕入れた商品の代金を含みます。指標として別のものです。

とはいえ、人口63万人の県に本社を置いたまま全国で6,000億円を売っている会社がある、という事実は残ります。

持株会社は、新橋にあった

さらに辿ると、資本の話が出てきました。

旭食品はトモシアホールディングスの傘下です。この持株会社の本社は、東京都港区新橋二丁目でした。

設立の経緯も記録されています。

旭食品ホールディングスがカナカンホールディングス株式会社、丸大堀内ホールディングス株式会社を合併して発足。3社統合により売上高6,000億円超の規模となった

2013年1月26日の発足です。高知の会社と、他の2つの卸が統合してできた持株会社が、東京に置かれている。

前の記事で医薬品卸を調べたとき、「本社が東京以外」は資本が地元にあることを意味しない、と書きました。今回はもう一段はっきりしています。旭食品という会社は高知にあり、商売は全国にあり、持株会社は東京にある。 企業リストに写るのは、このうち最初の1つだけです。

大きな資本の下同族・独立系
02,0004,0006,000伊藤忠食品/大阪市中央区/売上高 6993.7億円(2025年3月期・連結)伊藤忠食品6,994旭食品/高知県南国市/売上高 6034.8億円(2025年3月期・グループ)旭食品6,035ハニューフーズ/大阪市中央区/売上高 2160.1億円(2024年12月期)ハニューフーズ2,160佐藤(ボーキ佐藤)/福島県郡山市/売上高 1210.8億円(2023年12月期)佐藤(ボーキ佐藤)1,211セイコーフレッシュフーズ/札幌市白石区/売上高 1178.1億円(2025年12月期)セイコーフレッシュフーズ1,178億円
食品卸5社の売上高(億円)。決算期は社ごとに異なります。旭食品はグループ全体、伊藤忠食品は連結の数字です。

この業種は、統合の途中だった

他の会社も見ていくと、同じ方向の動きが続いていました。

伊藤忠食品(大阪市中央区)は連結6,993億6,900万円(2025年3月期)。1918年11月29日設立で、伊藤忠商事の子会社です。「伊藤忠グループで最も歴史のある会社」と記載されています。

この会社は2001年3月13日に東証1部へ上場していました。ところが、

2026年4月16日に親会社の合同会社FMDIが株式公開買付けで37.59%取得、5月19日に上場廃止、5月21日に完全子会社化

2026年5月に非上場になったばかりです。企業リストが「非上場」として拾っているのは、そういう理由でした。リストの生成は2026年8月29日なので、その3か月前の出来事です。

セイコーフレッシュフーズ(札幌市白石区)は1,178億1,300万円(2025年12月期)。1940年6月設立で、事業は総合酒類食品卸とボランタリーチェーン「ハマナスクラブ」。主要株主は株式会社セコマ、つまりセイコーマートのグループ企業です。

統合、子会社化、上場廃止。3社とも、大きな資本の下に入る方向で動いています。

一方で、1860年から独立している会社もある

全部がそうではありませんでした。

佐藤株式会社(福島県郡山市、通称ボーキ佐藤)は売上高1,210億7,800万円(2023年12月期)、従業員387名。創業が1860年(万延元年)で、当時は生糸木綿商、屋号は木村屋でした。1937年に株式会社化しています。

いま扱っているのは食料品・冷食・砂糖・粉・酒類・ビールの総合卸で、東北6県と新潟・群馬・茨城に支店を持ちます。子会社に佐藤燃料、三春酒造、鹿島酒類販売、燈尚物産。

生糸と木綿を売っていた店が、166年後に東北の食品卸になっている。

ハニューフーズ(大阪市中央区南船場)は2,160億900万円(2024年12月期)。1947年6月に浅田商店として創業、1967年12月14日に設立。食肉の生産・加工・輸入・販売を手がけ、代表取締役を浅田一族が務める同族企業です。

大きな資本の下同族・独立系
18501875190019251950佐藤(ボーキ佐藤)/1860年/食料品・酒類の総合卸佐藤(ボーキ佐藤)伊藤忠食品/1918年/酒類・食品の卸売伊藤忠食品旭食品/1923年/加工食品・冷凍・酒類旭食品セイコーフレッシュフーズ/1940年/総合酒類食品卸セイコーフレッシュフーズハニューフーズ/1947年/食肉の生産・加工・輸入ハニューフーズ
創業・設立年。1860年の佐藤(生糸木綿商として創業)から1947年のハニューフーズまで。5社とも戦前か終戦直後に始まっています。

リストに写るのは、住所だけ

調べ終えて残ったのは、こういうことでした。

企業リストは、会社ごとに1行を割り当てます。社名、都道府県、業種、売上高、従業員数。旭食品の行には「高知県」と書いてあります。

それは本社の住所として正しい。ただ、この会社がどこで商売をしているか(全国)も、誰の傘下にあるか(東京の持株会社)も、いつ3社が統合したか(2013年)も、その行には現れません。伊藤忠食品の行が「非上場」なのは4か月前に上場廃止したからだ、ということも書かれていません。

1行に収まっているのは、住所だけです。

このブログではリストの数字が壊れている例や、売上高の定義が業種で違う例を書いてきました。今回はそのどちらでもありません。数字も定義も正しくて、それでも会社の姿は分からない。 一社ずつ当たり直すしかない理由が、また一つ増えました。

数字と出典

会社所在地売上高(億円)売上の出典従業員1人当たり(万円)創業資本の形主力
伊藤忠食品大阪市中央区6,993.72025年3月期・連結1,18858,8701918大きな資本の下酒類・食品の卸売
旭食品高知県南国市6,034.82025年3月期・グループ2,78921,6381923大きな資本の下加工食品・冷凍・酒類
ハニューフーズ大阪市中央区2,160.12024年12月期23293,1081947同族・独立系食肉の生産・加工・輸入
佐藤(ボーキ佐藤)福島県郡山市1,210.82023年12月期38731,2871860同族・独立系食料品・酒類の総合卸
セイコーフレッシュフーズ札幌市白石区1,178.12025年12月期112105,1871940大きな資本の下総合酒類食品卸

各社の売上高・従業員数・設立年・本社所在地・資本関係、トモシアホールディングスの設立経緯と3社統合、伊藤忠食品の上場廃止(2026年5月19日)と完全子会社化(5月21日)は、いずれも Wikipedia 日本語版の記載に拠ります。

高知県の県内総生産(2022年度2兆4,704億円・全国46位)、1人当たり県民所得(182.6万円・全国46位)、推計人口(636,316人・2026年8月1日)も同様です。

県内総生産と売上高は、性質の違う指標です。 本文に書いたとおり、県内総生産は付加価値の合計、卸売業の売上高は仕入れた商品の代金を含みます。並べたのは規模感を示すためで、割り算をして意味のある数字は出ません。

この記事では1人当たり売上高を出していません。 従業員数の基準が社ごとに違うためです。セイコーフレッシュフーズの112名は正社員のみで、ほかに嘱託・契約19名とパート283名がいます(2014年12月末現在で、売上高の2025年12月期とは11年の開き)。ハニューフーズの232名は単独で、連結では1,470名です(2023年7月1日現在)。佐藤の387名は2016年12月期です。

旭食品の「四国内2位」という記載は2024年の年商によるもので、1位がどこかは記事に書かれていません。

企業リスト上、旭食品には「旭ポンズ」の記事が紐づいています。 別会社です。数字は正しい記事から取り直しました。同名や類似名の取り違えは、これで6例目になります。

5社は、公的オープンデータから作った企業リストから選んでいます。

Share Me!