2026年09月12日 00:00
企業リストで「空港」を含む社名を並べたとき、同じ名前が2度出てきました。
新関西国際空港株式会社(542億円)と、関西エアポート株式会社(2,454億円)。
どちらも関西国際空港の会社です。1つの空港に、なぜ2つの会社があるのか。
まず数字が異様でした。
新関西国際空港は売上高542億100万円(2022年3月期)に対して、従業員30人。1人当たり18億円を超えます。このブログでこれまで見た中で、今治の船主(正栄汽船・約5億5,900万円)を大きく上回る数字です。
一方の関西エアポートは連結2,454億円(2025年3月期)で、従業員は連結2,096人。こちらは1人当たり約1億1,700万円で、事業会社らしい水準です。ただしこの従業員数は2018年3月末時点のもので、売上高とは7年ずれています。
株主を見ると、性格の違いがはっきりします。
| 新関西国際空港 | 関西エアポート | |
|---|---|---|
| 設立 | 2012年4月1日 | 2015年12月1日 |
| 株主 | 国土交通大臣91.53%・財務大臣8.47% | オリックス40%・ヴァンシ・エアポート40%・その他20% |
| 事業内容 | 関西国際空港・大阪国際空港の設置・管理 | 関西国際空港・大阪国際空港・神戸空港の運営 |
| 従業員 | 30人 | 連結2,096人(単体420人) |
国が全額出資する会社が空港を「持ち」、民間の会社が「動かす」。 上と下が分かれていました。
この形はコンセッションと呼ばれます。施設の所有権は公的な側に残したまま、運営する権利だけを民間に渡す仕組みです。
関西エアポートの場合、運営権の契約は44年間で、2060年3月31日まで。その期間に1兆円の設備投資を行う計画が示されています。
新関西国際空港のほうは、2016年4月1日に両空港の運営権を関西エアポートへ移管し、以後はモニタリング業務などを担う立場になりました。従業員30人という数字は、空港を動かさなくなったあとの姿です。
なお、この時期については記述に食い違いがあります。新関西国際空港の記事は運営権の移管を2016年4月1日としていますが、ヴァンシの記事には2018年4月から関空・伊丹・神戸の運営権が移管されたとあります。神戸空港が加わった時期の違いと思われますが、確認できていません。
面白いのは、運営権を取った会社の顔ぶれです。
関西エアポート(関空・伊丹・神戸)の株主は、オリックス40%とヴァンシ・エアポート40%。ヴァンシはフランスの企業で、建築・土木のほかに高速道路・トンネル・空港・橋梁・駐車場のコンセッション事業を手がけ、世界17カ国57カ所で空港や道路、スタジアムなどを運営しています。
仙台国際空港の株主は、東急42%・前田建設工業30%・豊田通商16%・東急不動産9%ほか。仙台空港は2016年7月1日に、国管理の空港として全国で初めて民営化された空港です。
北海道エアポートは、北海道空港20.60%・三菱地所15.00%・東急10.00%・日本政策投資銀行10.00%・北洋銀行5.00%ほか。こちらは新千歳・旭川・函館・釧路・帯広・女満別・稚内の7空港を一括で運営しており、基本事業期間は33年です。
運営権を取っている顔ぶれ
東急が仙台と北海道の両方に入っています。 リース会社、総合商社、私鉄、不動産、銀行。空港会社という業種の会社が運営しているわけではありませんでした。
一方で、すべての空港がこの形になったわけではありません。
成田国際空港は連結2,637億7,300万円(2025年3月期)、連結3,142人。2004年に特殊法人の新東京国際空港公団から特殊会社へ移行しましたが、株主は国土交通大臣91.66%・財務大臣8.34%で、実質的な完全民営化には至っていないと記事に書かれています。持つ側と動かす側が、いまも同じ会社の中にあります。
中部国際空港は株主構成が違います。国土交通大臣39.99%、愛知県5.87%、そして民間企業等54.14%。国でも民間でもなく、最初から混ざった形で作られています。設立は1998年5月1日で、他社より古い。
年表にすると、運営権を取った3社がすべて2015年以降にできていることが見えます。空港を動かすために、そのつど新しい会社が作られている。
調べ終えて残ったのは、単純な事実でした。
「関西国際空港」も「仙台空港」も「新千歳空港」も、場所の名前であって、運営している会社の名前ではありません。
関空に降りれば、そこを動かしているのはオリックスとフランスの企業です。仙台に降りれば東急と前田建設と豊田通商。新千歳から旭川へ移動しても、運営者は同じ北海道エアポートのままです。
そして持ち主は、たいてい国のままです。新関西国際空港は従業員30人で、いまも関空と伊丹を所有しています。動かす人と持つ人が分かれていることは、空港の中では何も表示されていません。
このブログでは売上高という物差しで見えないものを何度か扱ってきましたが、今回は同じ場所に2つの会社があること自体が、外から見えないという話でした。
| 会社 | 所在地 | 売上高(億円) | 売上の出典 | 従業員 | 1人当たり(万円) | 創業 | 所有の形 | 主力 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 成田国際空港 | 千葉県成田市 | 2,637.7 | 2025年3月期・連結 | 3,142 | 8,395 | 2004 | 国が全額出資 | 空港の設置・管理 |
| 関西エアポート | 大阪府泉佐野市 | 2,454 | 2025年3月期・連結 | 2,096 | 11,708 | 2015 | 民間が運営権を取得 | 関空・伊丹・神戸の運営 |
| 新関西国際空港 | 大阪府田尻町 | 542 | 2022年3月期 | 30 | 180,667 | 2012 | 国が全額出資 | 関空・伊丹の設置・管理 |
| 中部国際空港 | 愛知県常滑市 | 541.2 | 2026年3月期・連結 | 948 | 5,709 | 1998 | 官民の混在 | 空港の設置・管理 |
| 北海道エアポート | 北海道千歳市 | 485.3 | 2024年3月期 | 657 | 7,387 | 2019 | 民間が運営権を取得 | 道内7空港の運営 |
| 仙台国際空港 | 宮城県名取市 | 47.1 | 2025年3月期 | — | — | 2015 | 民間が運営権を取得 | 仙台空港の運営 |
各社の売上高・従業員数・設立年・本社所在地・株主構成、関西エアポートの運営権期間(44年・2060年3月31日まで・1兆円の設備投資計画)、仙台空港が2016年7月1日に国管理空港として全国初の民営化であること、北海道エアポートの7空港と基本事業期間33年、成田国際空港が実質的な完全民営化に至っていないこと、ヴァンシがフランスの企業で世界17カ国57カ所を運営していることは、いずれも Wikipedia 日本語版の記載に拠ります。
運営権移管の時期について、2つの記事で記述が食い違っています。 新関西国際空港の記事は2016年4月1日、ヴァンシの記事は2018年4月としています。本文に書いたとおり、神戸空港が加わった時期の違いと思われますが、確認できていません。
基準年がそろっていません。 新関西国際空港は2022年3月期、北海道エアポートは2024年3月期、他は2025〜2026年です。従業員数のずれはさらに大きく、新関西国際空港の30人は2022年3月31日現在、関西エアポートの2,096人は2018年3月31日現在です。関西エアポートについては売上高と7年の開きがあり、1人当たり売上高はその分だけ信頼できません。
仙台国際空港は従業員数の記載が見つかりませんでした。 1人当たり売上高の図から除いています。
1人当たり売上高は、この記事では効率の指標になりません。 新関西国際空港が突出しているのは、空港を所有しているだけで運営していないためです。事業の形が違う会社どうしを同じ物差しで並べています。
6社は、公的オープンデータから作った企業リストから選んでいます。福岡国際空港(711億円)もリストにありますが、今回は確認が間に合わず外しました。
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